シニア世代を取り巻く雇用条件や労働環境の現状

                    

世界的な労働力人口の減少と少子高齢化問題。日本における現在の高齢者比率は27.3%と「4人にひとり」以上がシニア世代という計算です。そのような状況の中で、働く意欲が高いシニア層は今後の労働力不足解決の切り札として注目を集めています。

企業に求められるのはどのようなシニア像なのでしょうか。またシニア世代の労働環境や条件などの現状についても見ていきましょう。

減少する労働力人口と期待されるシニア世代

少子高齢化に伴い、労働力人口不足問題がクローズアップされています。総務省によれば労働力の中核と言われる15歳〜64歳の生産年齢人口は2008年をピークに減少しており(※1)、2015年に行われた平成27年国勢調査で7,629万人だった生産年齢人口は、2030年までに6,875万人へと減少する見込みです。

生産年齢人口が減少するなか、実際の労働力人口は2009年4月の労働力人口6,660万人に対し、2019年4月には6,868万人と増加に転じており(総務省労働力調査)、その背景には働くシニア層の増加が関係しています。

働くシニアが増えた理由として、2013年に改正された高年齢者雇用安定法によりシニアが働きやすい環境が整えられてきたことや、シニア層自身の高い労働意欲が影響していることが挙げられるでしょう。

世界的に少子高齢化は問題視されていますが、特に日本は世界的に見てもシニア世代の割合が26.7%と高く、ドイツの21.1%、アメリカの14.8%、イギリスの17.8%などと先進国の中でも群を抜いていることがわかります。

日本社会におけるシニア層は全体の1/4以上を占めており、シニア層はもはや支えられる側ではなく、支える側へとシフトしていると言えるでしょう。シニア世代は、社会を支える労働力として期待されているのです。

シニア世代雇用の雇用条件・労働環境の現状

労働力不足が懸念される現代において、政府が1億総活躍を目指し推進されている「働き方改革」。この働き方改革は「働く人々が個々の事情に応じた柔軟な働き方を選択できる改革」を指していますが、多くの人は「個々の事情=子育てや介護など」と想像するかもしれません。

しかし働き方改革の対象は、子育てや介護対象を有する世代だけではありません。働き方改革にはシニア世代の就業促進も含まれており、2013年に改正された高齢者雇用安定法では次の3つを主な柱としています。

  • 65歳まで定年年齢を引き上げ
  • 65歳までの継続雇用制度導入
  • 定年制の廃止
  • ※2

業界によっては多少の差がありますが、なかにはイオンリテールのように定年を70歳まで延長する企業も現れ(※3)、多くの企業で積極的なシニア活用が推進されています。また高齢者雇用安定法では、シニア世代の雇用措置を行なうだけでなく、企業側には次のような努力義務も課せられています。


【賃金・人事処遇制度の見直し】
年功序列に伴う賃金・人事処遇制度をとっている場合、能力・職務等の要素を重視する制度へ見直し。その際、高年齢者などの雇用や生活の安定にも配慮した段階的なものとすること。

【勤務日・勤務時間 】
短時間勤務・隔日勤務制度など、高年齢者の希望に応じた勤務が可能となる制度の導入。

【意欲・能力に応じた適正な配置・処遇】
シニア層の意欲や能力に応じた 適正な配置と処遇の実現。(※4


そのほか2012年(平成24年)に制定された高年齢者等職業安定対策基本方針では、シニア層の「職業能力の開発」「作業施設の改善」「職域拡大」「高年齢者の知識、経験などを活用できる配置・処遇の推進」「勤務時間制度の弾力化」(※5)など、雇用するだけでなくシニア層の意欲・能力に応じた適正な処遇が求められています。

企業に求められるシニア世代とは?

政府の後押しもあり、伸び続けるシニア世代の就業率。平成28年度(2016年~2017年)の総務省「労働力調査」によると(※6)、1980年には4.9%だったシニア世代の就業率が、2016年には11.8%(※7)と、倍以上の伸びを見せています。

活躍できる体制が整い、社会からも戦力として期待されているシニア世代ですが、他の年代同様、企業側にとってシニア世代であれば誰でも良い、というわけではありません。

独立行政法人労働政策研究・研修機構が行なった平成28年高齢者の雇用に関する調査(※8)によると、企業側がシニア世代に対して次のような人材を求めていることがわかります。

  • 働く意思・意欲がある
  • 健康上の支障がない
  • 会社が提示する労働条件に合意できる(※9

また若手育成スキル、経験を活かした顧客対応スキル、自分より若い年代が上司となることに抵抗がないコミュニケーション能力なども大切になってきます。

また同調査から、実際にシニア世代が就業している仕事内容は「専門・技術的」「管理的」「事務的」な仕事が多くを占めていることから、シニア層が求められる仕事内容・自分に求められる役割などをしっかり理解することが大切だと言えるでしょう。

セカンドキャリアの開拓で、新たな人生の喜びを

減少する労働力人口と反比例して上がるシニア世代の就業率。企業にとって、今やシニア世代の活用は女性活躍推進や外国人採用と同様、重要な人材戦略の一角を占めています。

今後はさらに、シニア世代に期待される役割も拡大していくことでしょう。これまで培った経験やスキルを活かすも良し、全く新しい世界に飛び込むも良し。セカンドキャリアを開拓して、新しい人生の喜びを見つけてみてはいかがでしょうか。

【引用元】
※1
総務省
第1部 特集 データ主導経済と社会変革
※2
熊本労働局
65歳までの『高年齢者雇用確保措置』
※3
日本経済新聞
イオンリテール、70歳まで手続き不要で雇用継続
※4
厚生労働省
高年齢者雇用確保措置における労働条件のポイント
※5
内閣府
高年齢者等職業安定対策基本方針
※6
内閣府
平成29年版高齢社会白書( 4 高齢者の就業)
※7
内閣府
平成29年版高齢社会白書( 4 高齢者の就業)」内、「(1)労働力人口に占める高齢者の比率は上昇」の棒グラフ下部の労働力人口の推移 CSV形式
※8
独立行政法人労働政策研究・研修機構
調査シリーズNo.156 高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)
※9
独立行政法人労働政策研究・研修機構
調査シリーズNo.156 高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」内、「図表3 65歳以降も働く際の該当基準」

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