定年後も働く人が増えていることが話題になっていますが、老後に働かない場合、日常生活はどうなるのでしょうか。
この記事では現在のシニア世代がどのようにして毎日を過ごしているかを紹介し、最後に働かない場合の日常生活をシミュレーションしてみます。定年後の生活を具体的に考える材料にしてください。
現状の働いていないシニアは何をして過ごしている?
現状のシニア(60歳以上)はどのように生活しているでしょうか。内閣府の平成30年版高齢社会白書(※1)によると、60代の71.9%、70代以上の47.5%は、働いている(企業に就業、経営に関与すること)か何らかの社会活動をしているという調査結果が出ています。
働く以外で多い社会活動としては、「自治会などの地域活動」が18.9%、「趣味やスポーツを通じたボランティア活動」が11.0%でした。
また、少数派ですが、「地域安全活動」や「子育て支援活動」、「伝統工芸の継承活動」をしているというシニアもいます。
社会活動をしているシニアに社会活動のメリットについて質問したところ、「新しい友人を得られたこと」が56.8%、「地域に安心して暮らすためのつながりができた」が50.6%という結果に。人と人とのつながりができることが、社会活動の満足度を高めている様子が伺えます。
生涯学習をしているシニアも半数近くいる
また、同じく平成30年版高齢社会白書(※2)では、シニアの生涯学習状況についての調査結果もありました。生涯学習をしていると答えたシニアは、60代と70代以上のともに約47%で、ほぼ同数という結果でした。
生涯学習として人気の分野は、音楽、美術、華道、舞踊といった趣味的な分野です。60代では24.6%、70代以上では24.9%のシニアが、これらの分野について学んでいると答えています。
健康・スポーツ分野の学びも人気(健康法、医学、栄養など)です。60代では23.7%、70代以降では20.3%のシニアが健康に興味を持ち、学習しています。
他に70代以上では教養や社会問題など座学に関する学習が60代に比べて多くなっていて、逆に60代ではボランティアに必要な知識、自然体験や生活体験などの体験活動をしている人の割合が70代に比べて多くなっています。
実際に身体を動かして体験する、社会活動に活かすという意識が強い60代、じっくり座学に取り組む70代以降という傾向が出ている結果です。
シニア世代がどのように毎日を過ごしているのかイメージが湧いてきたところで、実際に働かない選択をした場合の日常生活がどのようなものかを、タイムスケジュール形式で見てみましょう。
働かない選択をした場合の日常生活シミュレーション
ここまで紹介した調査結果に伴い、働かない場合の日常生活はどうなるかを3パターン程シミュレーションしてみましょう。
- 07:00
- 起床
- 08:00
- 朝食を摂りつつテレビ・ラジオの視聴、家族との会話
- 09:00
- 自治会など地域活動に参加するため外出
- 12:00
- 自治会や地域活動に参加している人たちと昼食
- 16:00
- 地域仲間との交流後、そのまま夕食の買い物に出かける
- 17:00
- 帰宅
- 18:30
- 夕食・夜のテレビ・ラジオ視聴
- 19:30
- 入浴
- 20:00
- 家族とのコミュニケーションや残りの家事など
- 22:00
- 就寝 (※3)
【パターン1】
自治会など地域活動に参加しているパターンの日常生活
自治会や地域活動に参加している場合は、集まった後に食事を楽しむ時間のゆとりがあります。午後から出かけるパターンなら、午前中に家事を済ませてから出かけることになるでしょう。帰宅後は家族と会話をする時間もあり、コミュニケーションを楽しむゆとりは十分にありそうです。
- 06:00
- 起床
- 07:00
- 朝食を摂りつつテレビ・ラジオの視聴、家族との会話
- 08:00
- 通学(通学にかかる時間や受講時間によって実際には変動する)
- 09:00
- 自治会など地域活動に参加するため外出
- 12:00
- 学校内で昼食
- 13:00
- 午後の授業、サークル活動、受講者同士での交流
- 18:30
- 帰宅
- 19:30
- 夕食・夜のテレビ・ラジオ視聴
- 20:30
- レポート作成や明日の講義に向けた準備
- 22:00
- 入浴
- 23:00
- 就寝 (※4)
【パターン2】
生涯学習で大学に通い直すパターンの日常生活
- 07:00
- 起床
- 08:00
- 朝食を摂りつつテレビ・ラジオの視聴、家族との会話
- 09:00
- 食事の後片付けなど自宅で家事
- 10:30
- 庭の手入れなどをのんびり楽しむ
- 12:00
- 昼食
- 13:00
- 1時間ほど昼寝
- 15:00
- 食事の準備など買い物のために外出
- 16:00
- 家族とのコミュニケーションや自宅で趣味の時間など
- 18:30
- 夕食・夜のテレビ・ラジオ視聴
- 19:30
- 入浴
- 22:00
- 就寝 (※5)
【パターン3】
特に何も予定が入っていない日の生活
何も予定のない日は、買い物や食事の用意、掃除洗濯などをしながらゆったり過ごせます。好きな映画をふらりと見に行ったり、読書に時間を費やしたりするのも楽しいでしょう。家族とのコミュニケーションや趣味の時間を大切にできる過ごし方です。
選択肢は多種多様!理想のセカンドライフを探してみよう
老後の貯えに心配がなく、働く必要がない場合は、ゆとりのあるセカンドライフを楽しむという選択も検討する価値があります。
社会活動に参加することで、人と人とのつながりを増やし、老後の人生を豊かにするのもひとつの選択肢です。
趣味や家族との会話を大切にしたいなら、社会活動よりも自宅での時間を充実させるという考え方もあります。
楽しく話せる友人を増やしたいなら、自治会など地域活動やボランティア活動を楽しむのもおすすめです。これまで時間がなくてじっくり取り組めなかった勉強を、生涯学習などで本格的に始めるのも良いでしょう。
自分はどんなセカンドライフを送りたいか、一度ゆっくり考えてみてはいかがでしょうか。
「平成30年版高齢社会白書(概要版) 3 学習・社会参加 第1章 高齢化の状況(第2節 3)」
「2014 年度 博士論文 高齢者の生活リズムに関する研究 桜美林大学大学院 八島 妙子」