今考える定年後の働き方 シニア生活をどう充実させるか

                    

充実した老後を過ごしたい。それは、誰もが持っている願いです。
定年後は「生きがい」や「社会とのつながり」が心の満足度を左右します。趣味や地域活動でそれらを満たす事も可能ですが、仕事一筋な人ほど、新たな居場所を作るハードルが高くなりがちです。
この記事では、老後を充実させる働き方をいくつかご紹介し、第二の人生の過ごし方の選択肢として検討いただけたらと思います。

定年後「働く」を希望する人は8割、その目的は?

明治安田生命生活福祉研究所が行った『2018年50代・60代の働き方に関する意識と実態』調査では、正社員で働く定年前の人の8割が「定年後も働くことを希望」しています(※1)。定年後も働く理由のトップは「日々の生活維持のため」(※2)ですが、年齢が上がるにつれ「生きがい」や「社会とのつながり」といったことをより重視する結果となっています。

老後の資金計画によっては、無理をして働く必要のない方もいるでしょう。しかし、定年後に毎朝決まった時間に起きる必要がなくなり、他者とのつながりが絶たれたときに心配なのは「老人性鬱」です。生活の大きな変化が、一時的な喪失感やネガティブ思考をもたらします。家にこもる生活で筋力が落ちて体調不調に陥るケースもありますので、何かしら人と繋がる活動を検討したいのではないでしょうか。

趣味やボランティアへの参加が生活を充実させるのと同様に、働くことも生活や人間関係を充実させる選択肢の一つです。ただひとつ注意したいのが、より充実して働くためには「ただ働く」ではなく「いかに働くか」を考える必要があることです。

定年後の働き方として、多くの50歳~64歳の定年前正社員が希望するのが「継続雇用」です。継続雇用は知識やスキルを生かしつつ、職場環境の大幅な変化がないのがメリットです。

しかし継続雇用ゆえのモチベーションダウンには注意したいところです。継続雇用者の約4割が、定年前とくらべて賃金が50%未満に低下したと回答しました(※3)。収入の減少幅が大きいほど仕事へのモチベーションがより低下する傾向がみられます。また、仕事内容が変わることも働く意欲に大きく影響します。役職が無くなり、張り合いを失ってしまうこともあります。

生活や生きがいのために継続雇用を選択したのに労働意欲が低下してしまうと満足に働けません。少なくとも企業に継続雇用の条件を前もって確認し、定年後の働き方をイメージしておくことは必須です。

 

実は継続雇用の人の4割は「定年にむけての相談の機会」がなかった(※4)と回答しています。いまの会社で定年後の働き方はどうなるのか、能動的に情報を集めることがシニア生活の充実度を左右する第一歩といえるでしょう。

やりがいを感じられる定年後の「転職」のために

これまでの役職や労働内容とは違ったチャレンジがしたいという場合、転職も選択肢の一つです。人間関係や環境を変え、新たなセカンドキャリアをスタートできるメリットがあります。

その際、転職を成功させ満足度を高めるのに大切なのが「キャリアの棚卸」です。

一般的に、高齢になるほど転職や再就職は難しくなるのが現状です(※5)。ハローワークによれば、シニアの職探しでアピールポイントになるのが「経験」です。これまでのキャリアを時系列で洗い出し、自分自身が持っている「スキル」を「実績」と共に整理することが大切です。

また、「生活の優先順位」もあわせて洗い出しましょう。これまでの人生で、あなたが充実したと感じた瞬間やなぜ充実していたのかを理由とともにリストアップします。逆にやり残して後悔していることなども書き出し、定年後の生活における優先順位を決めていきます。

たとえば、アメリカやイギリスをはじめとした主要国で、65歳以上で非正規の働き方をしている人の理由で多いのが「都合の良い時間に働きたいから」というもの(※6)。生活スタイルを優先する場合、必ずしも正社員の働き方に限定されないことがわかります。

継続雇用にせよ転職にせよ、定年後も働く場合は収入と年金受給額の基本はおさえておきましょう。60歳以上65歳未満は、年金受給額を含めた年収を12で割った月額が28万円を超えた場合、65歳以上は月額が47万円を超えた場合に在職老齢年金のカットが発生します。

また60歳以降で転職して満足度が高いケースは、興味のある仕事内容についたり、これまでの能力や経験が活かせる仕事についた人たちです(※7)。定年後の生活にむけて「いままでの経験」と「これからやりたいこと」「自分ができること」を整理するキャリアの棚卸は、「働き方」を改めて考えるきっかけにもなります。

定年前からはじめる「副業」というパラレルキャリア

定年後に転職するのは不安。継続雇用も気が進まない。そんな方に考えてほしいのが、定年前からはじめる「副業」というパラレルキャリアの作り方です。

「フリーランス実態調査」によれば、国内の副業従事者は年々増加し2018年には744万人になりました(※8)。常時雇用されつつ副業をする「副業系すきまワーカー」の13%は50代、60代も11%(※9)。副業が徐々に当たり前になりつつある現代、パラレルキャリアで経験を積むことは、定年後の働き方を支えるのに有効な選択肢であるといえます。

また同時に、未経験な分野に副業で挑戦するほか、本業で培った経験を副業に展開できるのもシニアならではの強みです。新聞記者がWebライターになったり、教員が課外活動用の教材を開発・販売したりと、情報通信技術が発達した現代では働き方が多様化しています。副業から定年後のキャリアの選択肢を増やすという良い点もあります。

「働く」ことは、日々の生活の糧を得るためだけでなく、人や社会の役に立てたり、社会との繋がりをもたらします。シニアの長年培ったスキルやキャリアを必要とする企業も年々増えてきています。定年前から自らに合った働き方を考え選択肢を増やしておくことで、充実したセカンドキャリアの選択肢を持ちましょう。

また仕事を通じて「生きがい」を感じるには、あなた自身がセカンドキャリアに何を望むのか自覚していることが大切です。ただ働くのではなく、生活の何を重視して働き方を選ぶかが、セカンドキャリアを充実させる鍵となるでしょう。

【引用元】
※1
明治安田生命
図表2-1 定年後も働きたいか(定年前正社員)
※2
明治安田生命
図表2-2 定年後も働きたい理由(定年前正社員・複数回答)
※3
労働政策研究・研修機構
(5)継続雇用者の定年前後の年収とモチベーションの変化
※4
明治安田生命
図表 1-3-1 定年前に働いていた会社の高齢期、定年に向けての相談の機会
※5
リクルートワークス研究所
P7 ■2018年度上半期 中途採用における採用年齢層
※6
総務省
P9 図 11 非正規の職員・従業員の高齢雇用者が現在の雇用形態についた主な理由別内訳(平成 28 年)
※7
独立行政法人労働政策研究・研修機構
P17,18 図表2-17 転職経験者における転職先選定理由の因子分析結果(無回答を除く、主因子法プロマックス回転、n=2,315)
※8
【ランサーズ】フリーランス実態調査2018年版
P8
※9
【ランサーズ】フリーランス実態調査2018年版
P14

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