1964年 東京オリンピックと、間近に迫る2020年大会

                    

2020年の東京オリンピックの開催を控え、2019年現在、大会準備は大詰めをむかえています。
大会コンセプトの3つのうち1つには「未来への継承」というコンセプトがあります。これには1964年の東京オリンピックが高度成長の弾みとなったように、2020大会では成熟国家となった日本が今度は世界にポジティブな変革を促し、それらをレガシーとして未来へ継承していく、という意味が込められているそうです(※1)。
第二次世界大戦に敗戦して19年、「戦後の復興」や「科学技術先進国」というイメージを世界に強く印象付けたことで大きな意味があったこの大会を、今一度振り返っていきたいと思います(※2)。

日本およびアジア圏において初となるオリンピック

第18回夏季オリンピックとして開催されたのが、日本の東京で行われた「東京オリンピック」でした。開催期間は1964年10月10日から同月24日まで2週間に渡り、陸上や球技など様々な競技が行われていきました。

今大会を通して日本が獲得したメダルは、金16、銀6、銅8、であり、総合順位で4位の記録を残しました。また日本経済にも大きな影響を及ぼし、競技施設建設や交通整備などに多額の投資が行われ、いわゆる「オリンピック景気」と呼ばれる好景気を生み、このおかげで日本全土が活気に満ちるようになっていきました。

テレビ文化にも影響を与えた

「東京オリンピック」は競技の様子をテレビ中継して、日本中のお茶の間へ選手たちの活躍を届けることに成功した非常に有意義な大会でもありました。

衛星放送での技術の進歩や、当時初めてのスローモーション画像などを駆使した内容は、その後のテレビ放送に大きな功績を残しました。さらに特徴的だったのは、当時まだ珍しかったカラー放送を行なったことでした。

当時ではまだ白黒中心だった家庭用テレビ事情のなか、東京オリンピックはカラー放送がされるということで、近所のカラーテレビを持っている家にお邪魔して放送を見た思い出があるという人もいるでしょう。

この頃に、各メーカーはカラーテレビの普及・宣伝に力を入れていましたが、カラーテレビがようやく普及していったのは1970年代に入ってからでした。なので、当時の東京オリンピックをカラー放送で見たという人は、かなり貴重な体験だったと言って良いでしょう。自慢しても良いぐらいです。

幻となった1940年の東京オリンピック

東京オリンピックは、実を言うと1964年開催の遥かに前である1940年に一度開催が予定されていまいした。史上初の有色人種国家、またアジアにおいて行われる大会として期待され、準備も進められていましたが、日中戦争の影響などによって中止が決定してしまい、幻となりました。

1936年に国際オリンピック委員会で日本・東京での開催が決定され、陸上、競泳、球技など様々な競技の実施が予定されていました。
しかし1937年、当時の国際情勢を見た政治家の河野一郎が、オリンピック開催について懸念を示した発言をしたことが取り沙汰され、盧溝橋事件の勃発や日中戦争の始まりなどによる影響で軍部からの圧力も高まりました。そして当時の内閣総理大臣の近衛文麿は、需要計画の中でオリンピック中止を明記し、結果的に東京オリンピックの開催返上がされ、実施されることなく終わってしまいました。五輪関係でかかった費用は当時としては高額な90万円以上に及んでいたとされています。

また、東京都世田谷区駒沢にある「駒沢オリンピック公園」は、当初オリンピックの主会場として準備されていたものです。1940年の開催は中止になりましたが、後の1964年開催の大会へも活かされることになりました。

シンプルゆえに普遍的な大会ポスター

東京オリンピックといえば、日の丸の下に「TOKYO 1964」と書かれたポスターを思い出す方もいるかもしれません。

このデザインは大会エンブレムとしても使われ、文字は原弘氏、全体デザインは亀倉雄策氏が行ないました。
亀倉氏はこのデザインについて「単純でしかも直接的に日本を感じさせ、オリンピックを感じさせる、むずかしいテーマであったが、あんまりひねったり、考えすぎたりしないよう気をつけて作ったのがこのシンボルです。日本の清潔な、しかも明快さと、オリンピックのスポーティな動感とを表してみたかったのです。その点、できたものはサッパリしていて、簡素といっていいほどの単純さです。(以下略)」(※3)と自ら語ったように、強いインパクトを与えるデザインでありながら、50年以上経っても古さを感じさせない、シンプルで普遍的なものとなっています。

2020年の開催はもう目前

来る2020年には、56年ぶりで史上二度目(公式記録上では三度目)となる東京オリンピックの開催が予定されています。日本開催でのオリンピックとしては、1998年の長野オリンピック以来22年ぶりともなります。招致に際するプレゼンテーションでは、フリーアナウンサーの滝川クリステルによる「おもてなし」というワンフレーズが話題にもなりました。

2019年現在、開催準備は大詰めを迎え、大会への期待も日に日に膨らんできています。 2020年の東京オリンピックでは再び日本が盛り上がるようなポジティブな影響を与えることを期待しています。

【引用元】
※1
TOKYO 2020
大会ビジョン
※2
nippon.com
1964 TOKYOから50年、あのときとこれから
※3
公益財団法人 日本オリンピック委員会
1オリンピック・メモリアル vol.2 1964年東京オリンピックポスター

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