ひと昔前まで早期退職のイメージは「業績不振」や「リストラ」などマイナスイメージが付き物でした。ところが、現在は上場企業を中心に、早期退職希望者を積極的に募集するという動きが見え始めています。
この記事では「上場企業が早期退職希望者を募るねらい」や、早期退職を希望した場合の「その後の人生を豊かに生きて行くための考え方やノウハウ」をご紹介します。
上場企業が早期退職募集を促進している理由とは?
東京商工リサーチの調査では、2019年度は上場企業のうち、16社が早期退職希望者を募っているというデータが示されています。2018年度では12社(※1)だったことから、早期退職募集に踏み切る企業が増えていることが分かります。
特に早期退職募集を行う上場企業は、製薬業界や電気機器業界が大半を占めています。(※2)これらの分野は業績が好調な企業も多く、今後の新薬開発のために経費を使ったり、成長分野への事業強化を行っています。そのため資金的ゆとりがあるうちに人員整理をすることを目的として早期退職を推進しています。また早期退職は一定以上の年齢を条件とする場合もあり、その多くが45歳からというケースが目立っています。
このような流れから、上場企業16社のうち2019年の早期退職者募集は6,697人にものぼっています。ある企業では、早期退職者の応募が2,800人を超え、700人~800人が希望を出している企業も少なくありません。(※3)
これだけ早期退職募集への希望者が出る理由は、従業員側に以下のようなメリットがあるからと考えられます。
- 退職金を増額してもらえるケースが多く、起業などの夢がある人などは、開業資金にあてることができる。
- 家族のためや自分の趣味などの第二の人生をある程度ゆとりを持って過ごすための、老後資金にできる。
- 早期退職希望者は会社都合による退職となることが多い。退職後の失業給付の待期期間がなく、給付期間も長いため、退職後の生活環境を急激に変えずにすむ。
早期退職を考えるならタイミングも重要
早期退職の条件として、企業側から退職金の上乗せなどの条件を提示されることもあります。つまり、まとまったお金が手に入ることになるので、早期に退職した方が得だと感じる方も多いかもしれません。ただ、目先のことだけにとらわれてしまうと、その後の生活に支障をきたしてしまう可能性もあります。
例えば、自身の現状を把握せずに早期退職をしてしまうと、再就職先がない、やりたいことが分らないなどの問題に直面してしまいます。この場合は、今が早期退職するベストな時期なのかどうかをよく考え、適切なタイミングを見極める必要があります。
また、自分自身の社内評価や市場価格を把握するのも良いですし、人材派遣会社で自分のキャリアを客観的に分析してもらうことで、今後どんなことができるかを知るきっかけにもなります。
さらに、退職後に後悔しないように、現在の職場で働き続けることに生きがいを感じていけるのかを、再度考え直すこともおすすめです。
退職後の第二の人生プランは前向きに検討してみよう
退職後は別の企業に再就職し、自分のスキルを再び活かして働くのか、趣味や家族とともに過ごす生活を選ぶのか。あるいは、起業をするのかなど、自分に合った人生プランをしっかりと持つことが、第二の人生を考える上での、はじめの一歩となります。
そのために、退職前から様々な趣味にチャレンジしたり、趣味の集まりに参加することも良いでしょう。
また、自分の得意分野を活かして、副業などのパラレルキャリアも視野に入れ、退職後の選択肢を増やしておくことも大切です。
またその活動によって、現在の職場以外の人脈が増えたり、生涯をかけてやりたいことが見つかったりすることもあるでしょう。
退職後の選択肢を増やすことによって、よりポジティブな視点で未来をとらえられるようになれば、第二の人生プランにも建設的なイメージを持つことができるようになります。
企業によっては45歳以上を対象として早期退職者を募ることもあるので、若いうちに第二の人生を踏み出せる可能性もあります。その点も頭にいれて人生プランを立ててください。
近年は平均寿命の延びによる「人生100年時代」の到来で、早期退職をせずとも退職後は長い余生を過ごすことになるでしょう。この長い後半生を、自分の興味の追求や新しい仕事への挑戦など、自己実現を目指す活動に当てることも、1つの選択肢として検討してはいかがでしょうか。
終身雇用ではないからこそ人生にメリハリを
ある企業に就職したら定年まで安定した収入が得られるといった終身雇用制度は、年々減少の傾向にあり、今後もその傾向は持続していくと考えられています。そのため、日ごろから早期退職の可能性や第二の人生について、考える機会を持っておくことは大切です。
さらに、退職前から複業を持つことで、退職後の選択肢がずっと広がります。まずは今の生活や職場環境、ご自身のスキルから、将来やりたいこと、やれることを探してみてはいかがでしょうか。
「2019年「主な上場企業の希望・早期退職者募集状況」調査」