被相続人が亡くなったら、遺族は相続手続きをする必要があります。相続手続きのなかには聞き慣れないものや期限が決まっているものもあるので、全体の流れを把握しておくことが大切です。
この記事では被相続人が亡くなった後に必要な相続手続きの流れ・手順を以下の期限ごとに区切って解説します。
(1)14日以内
(2)4カ月以内
(3)5年10カ月以内
期限に遅れないよう早めに準備しましょう。
14日以内の相続手続きの流れ
まずはじめに、亡くなってから14日以内に必要な相続手続きの流れを解説します。(※1)
・死亡届の提出
被相続人が死亡したら、7日以内に死亡届を市区町村役場に提出します。特に理由なく遅れた場合は、5万円以下の過料を払うことになる(※2)ので要注意です。死亡届は医師が記入する死亡診断書と一体になっており、死亡診断書の左側が死亡届となっています。市区町村役場に火埋葬許可申請書とあわせて提出し、火葬許可証を受け取りましょう。
・葬儀
葬儀社に火葬許可証を渡すと火葬の申込ができるので、お通夜と葬儀を速やかに執り行います。葬儀は何日以内に行わなければいけないという決まりはありませんが(※3)、地域の風習や火葬場の空き状況などを確認し、できるだけ早めに行ってください。
・金融機関へ連絡
金融機関に口座名義人が亡くなったことを伝えて、口座の入出金を停止してもらいます。停止させないと他の相続人が勝手にお金を引き出してしまう恐れがあるためです。なお、口座停止後も法定相続分の3分の1までは相続人が単独で下ろすこともでき、葬儀代などに充てることができます(1金融機関につき上限は150万円まで)。(※4)法定相続分とは民法で定められた取り分のことで、相続人の人数や続柄によって割合が変わります。
・生命保険金の受け取り
加入している生命保険会社に連絡し、保険金受取の手続きをします。請求に必要な書類として死亡診断書や受取人の戸籍抄本、印鑑証明などがあります。(※5)保険会社から請求書と必要書類の案内が届くので、案内に従って手続きを行ってください。
・健康保険と遺族年金の手続き
被相続人が国民健康保険に加入していた場合は、14日以内に資格喪失届と健康保険証を市区町村役場に提出します。被相続人が会社員の場合は、5日以内に会社に資格喪失届を出します。
4カ月以内の相続手続きの流れ
次に、亡くなってから4カ月以内の相続手続きの流れを解説します。(※6)
・遺言書の確認と検認
遺言書が見つかったら、亡くなった人の住所地を管轄する家庭裁判所に提出して検認の手続きをします。被相続人の出生から死亡までの戸籍、法定相続人全員の戸籍など(※7)をあわせて提出します。なお、遺言書は検認前に勝手に開封してしまうと5万円以下の過料に処される恐れがあるため、未開封のまま提出してください。
・相続人調査
遺言書がない場合は、相続人全員が集まって遺産分割協議をし、遺産の分け方を協議します。協議前に本籍地の市町村役場で被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得し、相続人を確認しましょう。
・相続財産の調査
遺産分割協議前に、被相続人が所有していた全財産を確認します。預金通帳や証書、固定資産税の納付書などで預金口座や不動産、借金の有無を調べてください。
・遺産分割協議の開始
相続人と相続財産の調査が終わったら、遺産分割協議を始めます。相続人が直接集まったり、メールや電話で連絡を取ったりして誰がどのくらい遺産を相続するのか決めます。相続の内容は10カ月以内に確定させます。
・限定承認や相続放棄
被相続人に借金があり、限定承認や相続放棄をしたい場合は、相続を知った日から3カ月以内に家庭裁判所で手続きします。3カ月に手続きをしないと相続を承認したことになり、被相続人に借金があった場合は代わりに返済しなければいけません。
・所得税の準確定申告(※8)
被相続人が事業をしていたり、2,000万円以上の給与所得があったりした場合は、故人に代わって所得税の準確定申告をします。死亡後4カ月以内に被相続人の納税地にある税務署に申告書を提出して、納税してください。期日を過ぎると延滞税などがかかります。
5年10カ月以内の相続手続きの流れ
次に、亡くなってから5年10カ月以内の相続手続きの流れを解説します。(※9)
・遺産分割協議書の作成
遺産分割協議で遺産の分け方について意見がまとまったら、遺産分割協議書を作成して相続人全員が署名押印します。相続の発生を知った日から10カ月以内に各人が相続税を納める必要があるので、早めに作成しましょう。遺産分割協議で揉めてしまって話がまとまらない場合は、家庭裁判所で調停や審判の手続きをして、遺産の分け方を決めることになります。
・相続税申告と納付手続き(※10)
相続税は、遺産総額が基礎控除額を超えた場合に申告と納税手続きが必要です。基礎控除額以下であれば申告手続きも不要です。相続税を納める義務がある場合は、納税地を管轄する税務署に申告書等を提出します。遺産分割協議が終了していなくても、遅延した場合は延滞税を徴収される恐れがあります。
・遺留分減殺請求の手続き
相続人には「遺留分」といって、最低限遺産を相続できる権利があります。遺言書に遺産の全額を愛人に譲ると書かれてあっても、配偶者なら遺産の2分の1を受け取る権利があるため遺留分減殺請求ができます。遺留分を侵害した相続人に対して遺留分減殺通知書を送付して、解決できない場合は家庭裁判所に相談します。
遺留分減殺請求期限は、被相続人の死亡と遺留分侵害を知ってから1年以内です。遺留分侵害を知らなくても10年以上経過してしまうと請求できなくなります。
<strong・相続税軽減の手続き
遺産分割協議で意見がまとまらず、未分割のまま相続税の手続きをすると、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例などの軽減が適用されません。しかし、被相続人の死亡から3年10カ月以内に遺産分割協議が終わり、そこから4カ月以内に税務署に更正請求をすれば税額軽減が適用されます。
・相続税還付請求の手続き
相続税申告書に誤りがあり、相続税を払いすぎていることが分かったら、税務署に相続税還付請求の手続きをすると、払いすぎた額が戻ってきます。手続きの期限は被相続人の死亡から5年10カ月以内です。
期限までに相続手続きを終わらせよう
被相続人が亡くなったら、遺族はさまざまな相続手続きをすることになります。法要の準備だけでも精一杯かもしれませんが、なかには期限を過ぎるとお金を払うことになる場合や、手続き自体を受け付けてくれない場合があるので注意が必要です。
ぜひ、期限直前に焦ることがないようスケジュールにゆとりをもたせて進めてください。
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