名作「七人の侍」がアメリカ西部劇としてリメイクされた「荒野の七人」

                    

「荒野の七人」とは

日本の名映画監督として知られる黒澤明。彼のキャリアにおいても傑作と名高い映画「七人の侍」。戦国時代を舞台にした大作時代劇で、侍などが登場する作品ですが、これを西部開拓時代のメキシコに舞台を移してリメイクされたのが映画「荒野の七人」です。

ストーリーの大筋は原作の「七人の侍」をなぞる形となっており、無法者に荒らされる村を凄腕の流れ者のヒーローたちが救うところは同じように描かれています。決定的な違いは、侍が西部のガンマンに置き換わっている点。見た目も国も違いながら、見事にリメイクしたユニークな作品に仕上がっています。

あらすじについて

映画の舞台は西部開拓時代のメキシコ。とある寒村は、毎年収穫の時期になると決まって現れる盗賊の一団によって襲われ、作物も奪い去られてしまうことが続いていました。そしてついには村人の一人が殺される事件が発生。村人たちは武器を持たないため、強い男たちに守ってもらうしかないと決意した彼らは、ガンマンを雇うためにテキサスへ向かいます。

テキサスでは、凄腕のガンマンであるクリスが先住民の遺体を埋葬しようとしていました。それを手助けするためにもう一人のガンマンであるヴィンも同行。しかし、先住民を嫌う町人たちから拒絶され、仕方なく遺体を馬車へ乗せて移動していましたが、荒くれ者からの攻撃にあいます。しかし襲撃にも臆することなく二人のガンマンは敵を打倒して無事墓地に到着。その一部始終を見ていた寒村の人は、彼らに村を救ってくれるように懇願します。この願いを受けて二人は少ない報酬ながらも承諾し、より強力な仲間探しを始めます。

メキシコの寒村へ行くまでに、ベルナルド、ハリー、ブリット、リー、チコという仲間たちを集めて計7人になったガンマン集団は、盗賊との戦いに挑んでいきます。

原作との共通点

侍の時代劇を西部劇のガンマンのストーリーに置き換えるという、大胆な発想が面白味である「荒野の七人」。リメイク作品ということもあって、やはり気になるのは原作との共通点でしょう。ここでは、原作と共通して描かれているシーンなどについて解説していきます。

まずはストーリー序盤の村人がクリスたちにガンマンの依頼をするところ。これは原作「七人の侍」でも同じで、戦国時代の貧しい村の人々が野武士に襲われていて、追い詰められた村人たちが用心棒となる侍を雇うという内容になっています。

また、仲間の登場シーンも似通っている点があります。「荒野の七人」のベルナルドは、「七人の侍」の侍の平八と同じ立ち位置のキャラクター設定で、薪割りをしているシーンで登場という共通点があります。また、ブリットは久蔵と同じく対決シーンで登場し、作品中で最も原作の役柄に忠実な登場人物とされています。

原作との相違点

次に、原作とは異なるポイントを紹介していきます。

「七人の侍」のストーリーでは、途中で七人のうちの平八と五郎兵衛が亡くなってしまいますが、「荒野の七人」では最後の戦いまで七人のうち誰も死なない設定になっています。また、クリスの登場エピソード部分も、原作の勘兵衛と異なっています。原作では、子供を人質にとった夜盗を坊主に変装した勘兵衛が捕まえるという内容でしたが、「荒野の七人」では遺体を運ぶというものになっています。

原作になかったポイントは、ベルナルドが子供を叱るシーン。自分の親を弱虫だと非難する子供に対してベルナルドは「銃を持って戦うよりも立派なお父さんたちを悪く言ってはいけない」と叱ります。子供想いの彼のキャラクターがより印象的に描かれているオリジナルなエピソードになっています。

登場人物の役柄の照合

では、「荒野の七人」と「七人の侍」のメインキャラクター達がどのように置き換わっているのか見てみましょう。

クリス=勘兵衛
ヴィン=五郎兵衛+七郎次
ベルナルド=平八
チコ=勝四郎=菊千代
ハリー=(該当役柄なし)
リー=(該当役柄なし)

まとめると上記のようになります。原作に沿った人物だけでなく、原作とは異なったオリジナルな役柄の人物も織り込まれているので、また違った角度から楽しむことができるようになっています。

なぜか服がキレイな村人たち… その理由とは

映画の中のメキシコ寒村の人々は、苦しい生活下に置かれているにも関わらず、思ったよりキレイな身なりをしていることが見受けられます。原作では、貧しい村人がリアルに描かれていたのに… と思う方もいるでしょう。しかしこれには事情がありました。

1954年に制作されたゲーリー・クーパー、バート・ランカスターが主演する「ベラクルス」という映画ありましたが、この映画の中で描かれていたメキシコの表現がひどく汚くされたことで、メキシコ政府が憤怒。以降に制作された「荒野の七人」にもメキシコ政府官からのチェックが入り、「メキシコ人がみすぼらしく映るのはダメ」ということで、衣装の汚れは極力取られていたそうです。映画といえど、国のイメージを強く印象づけてしまうこともあるので、こうした厳しいチェックがされるようになったのでしょう。

時代劇のリメイクで国も文化も違うところで描き直した「荒野の七人」。製作陣の大胆なその心意気には感服です。原作と見比べながら楽しんでみると、作品をより深く理解することができるでしょう。

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