ヒッピーの歴史と社会的な影響力 

                    

自然と自由を愛するアメリカの一大ムーブメント

「ヒッピー」とは、1960年から1970年代前半にアメリカを中心にして起こったムーブメント(社会運動)のことで、野生的な生活への回帰を掲げる人々によって広められました。

当時の国際情勢はベトナム戦争下に置かれており、この戦争に反対する若者達による運動がヒッピームーブメントの発端となりました。徴兵や派兵に強く反対し、自由と平和と愛する心を持った彼らは徐々にその思想をアメリカ全土へ広めていきます。

ヒッピーの文化は音楽などの芸術とも深い縁を持ち、ヒッピースタイルのミュージシャンなども多く登場してくるようになりました。しかしその自由すぎる生き様は、そうでない人々からするとかなり過激にも取れるような部分が目立ちました。こうしたヒッピーとは反対にいる人々を「スクエア」と呼んだりすることもありました。

そして1970年代後半以降はヒッピームーブメントがだんだんと縮小していきますが、1990年代初頭前後には新たなヒッピーとされる人々が現れてネオヒッピーなどとも呼ばれました。その後ヒッピー文化は淘汰されていきますが、後のレイヴと呼ばれるパーティーやクラブ文化などへ形を変えてその思想の一部は受け継がれていくこととなっていきました。

ヒッピーとドラッグの関係

1960年前後はドラッグに関する取締りなどもまだ未発達であったため、ヒッピー達は積極的にマリファナやLSDなどを使用して高揚感を味わっていました。

こうした薬物による覚醒を求め、精神を解放することを推奨していたのがヒッピー文化の大きな一面として挙げられます。現代で考えるとかなり過激ですが、当時の音楽コンサート会場の映像などを見返してみると、ほとんどの人がマリファナを当たり前のように吸い、音に合わせて狂ったように踊っている姿がとても印象的です。

当時のミュージシャンの多くもドラッグを使用しており、そうした高揚感に包まれた中で普段では感じられない新しい感覚を追い求めていたようです。しかし、1970年代以降にベトナム戦争の終結、そしてこうした薬物に対する取締りの強化によって、ヒッピー文化の衰退に拍車をかけることになりました。

音楽シーンにおけるヒッピー

ミュージシャンの中にもヒッピー文化に関わっていた人・グループはかなり多くいます。あの有名な4人組バンド、ビートルズのメンバー達もヒッピーであったと言われており、コミュニティの人々からも厚い支持を受けていました。

ただ、ビートルズはヒッピーであったというよりもインドの宗教文化に傾倒していたところが強く、巡礼などの目立った行動が他のヒッピー達の関心を集めていたことが真相のようです。

そしてヒッピー文化を象徴するかのようなロックバンドが「グレイトフル・デッド」です。カリフォルニア州のバンドであり、ヒッピー文化にどっぷりと浸かったメンバーらはサイケデリックと呼ばれるロックを演奏。アメリカでは熱狂的な人気で、ライブには「デッドヘッズ」と呼ばれる彼らの追っかけファンが殺到し、ヒットチャートに顔を出すことがないにも関わらず各地で満員のスタジアムコンサートを行い続けていました。

また、1969年にはニューヨークで開催された「ウッドストックフェスティバル」はヒッピー文化の頂点とも言える音楽フェスティバルで、約40万人もの観客を集めて3日間行われました。何十組ものアーティストが出演し、ヒッピー特有の自由な雰囲気に包まれたイベントでした。

日本におけるヒッピー文化

ここ日本にも1960年代後半には、ヒッピー文化が流れ込んできていました。日本でもヒッピーという呼称が用いられたのと同時に、東京の新宿付近では「フーテン」という呼ばれ方をされる人々も現れました。しかしながら、アメリカほど日本にヒッピー文化は根付かずに衰退へと歩みを進めていきました。

有名人もみんな元ヒッピー

世界各国の有名人の中には、かつてヒッピーとして活動したりムーブメントに関わった人が多くいます。著名な人物をざっと挙げていきましょう。

J・D・サリンジャー(小説家)、スティーブ・ジョブズ(Apple創業者)、ジョン・レノン(ビートルズのメンバー)、オノヨーコ(音楽家)、などなど様々な業界に渡って元ヒッピーの人々がいます。
日本では、寺山修司(歌人)、忌野清志郎(歌手)、萩原健一(俳優・歌手)などを筆頭にヒッピー文化を継承していた人物がいます。

いずれの人物もそれぞれの分野において大きな功績を残している場合が多く、それが元ヒッピーであるからかどうかは定かではありませんが、個性的な性格の人が多いようです。

21世紀では時代遅れ

現代においてヒッピーというと、正直言ってあまり良い印象を抱かれないかもしれません。

ましてや薬物などもってのほかとされているので、かつてのような暮らしぶりと同じようにヒッピーとして生活していくことはかなり難しいでしょう。ただ、ヒッピースタイルといわれるファッションは、現代のトレンドとは離れたところにありますが、ナチュラル系のショップではまだまだ需要があるようです。

現代に受け継がれるヒッピーカルチャー

戦争に反対する考えを持つことはとても良いことだと思いますが、自由を追い求めるがゆえに一般とはかけ離れた文化や思想を持っていたヒッピー達。しかし今でもファッションやライフスタイルにヒッピーの影響を受け、個性的な暮らしをしている人もいるのは事実です(もちろん常識の範囲内で、ですが)。

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