人気を博した東映製作の刑事ドラマシリーズ
「Gメン’75」(じーめん ななじゅうご)とは、TBS系で放送された人気テレビドラマです。初回放送が1975年であったことから“75”という数字がタイトルに冠され、シリーズ化もされました。
毎週土曜の21時台に放送枠を持ち、当時の人気番組「8時だよ!全員集合」の後ろに続く時間帯でした。全員集合から立て続けに見ていたという人も多いのではないでしょうか。
内容は刑事ドラマであり、特別潜入捜査班である「Gメン」のメンバーたちが様々な犯罪を解決していくハードボイルドな演出が話題を呼びました。ドラマのスタート当初は丹波哲郎、原田大二郎、倉田保昭、岡本富士太、藤田三保子、藤木悠、夏木陽介など、人気の俳優がこぞってキャスティングされていましたが、シリーズごとに出演者が度々入れ替わっていく形態をとっていました(主演の丹波哲郎はシリーズ通して出演し続けました)。
Gメン名物の滑走路シーン
Gメンシリーズの名物ともいえるのが滑走路を歩くオープニングシーンでしょう。「Gメン’75のテーマ」の曲を流しながら、Gメンのメンバーたちが横一列で飛行機の滑走路を歩いてくるシーンの格好良さが視聴者を釘付けにし、さらに淡々としたナレーションが強烈な印象を与えました。
この滑走路でのオープニングシーンは、東京都品川区の道路や、海上自衛隊の館山航空基地の滑走路を使って撮影されたそうです。そしてこのシーンで映し出される路上の白文字タイトルは、白いベニア板をいくつも並べて作られていたものでした。現在ならCG合成などで簡単にできてしまいますが、1970年当時ならではの映像技術のアイデアが垣間見られますね。
オープニングシーンは、シリーズのキャストが入れ替わるごとに何度も新調されていきました。Gメンのメンバーチェンジがあったときには、毎回オープニングシーンも楽しみにしていた視聴者もたくさんいたことでしょう。
「Gメン’75」がスタートするまでの遍歴
人気刑事ドラマとして放送されていた「Gメン’75」ですが、実は製作されるまでには、いくつかの経緯があります。
“TBS系土曜21時枠”で、なおかつ”東映製作”という番組はこれまでに3作品ありました。国際警察の秘密捜査官グループの活躍を描いたアクションドラマ「キイハンター」が最初の作品となり、続く2作品目として探偵学校の校長と生徒たちがストーリーを繰り広げる「アイフル大作戦」が製作され、3作品目は「アイフル大作戦」の完全な続編として探偵局のメンバーたちが事件を解決していく「バーディー大作戦」が放送されました。そして、4作品目となったのがこの「Gメン’75」でした。
それまでの3作品はコミカル寄りな印象が強いストーリー内容で安定した視聴率を獲得していましたが、「Gメン’75」では一転して緊張感が張り詰めた心理描写や、社会性を前面に出した人間ドラマなどをコンセプトに掲げた“ハードボイルド”な刑事ドラマとして製作されました。この土曜21時枠のドラマを手がけてきた東映のプロデューサーである近藤照男は、本来シリアスで社会性の強い、それこそハードボイルドな志向があり、「バーディー大作戦」までの3作品は近藤が求める路線の内容ではなかったといいます。
また、「バーディー大作戦」が視聴率面で苦戦を強いられていたことや、1970年代当時のオイルショックなどの世情から社会派の人間ドラマが人気を集めるようになっていったこともあり、製作陣スタッフで議論が重ねられた結果「Gメン’75」としてシリアスでハードな作品が世に送り出されることとなりました。
また、土曜21時枠の作品には「Gメン’75」のキャストが何人か出演しているのも見所です。「Gメン’75」で黒木哲也警視役を務めた丹波哲郎は、実は「キイハンター」にも出演していました。しかも、そのときに演じた役名は「Gメン’75」と同じ“黒木哲也”だったというのも面白いですね。
丹波は「アイフル大作戦」にも警視庁の警部“桜田正三郎”役として出演していたり、続編となった「バーディー大作戦」でも同じ役名で主役を務めました。「バーディー大作戦」では、岡本富士太、藤木悠など後のGメンのキャストも名を連ねており、ドラマ後半のハードボイルドな展開からも「Gメン’75」へと繋がる作品となっていました。
「Gメン’75」と知っていても、それ以前の関連作品は知らない人も多いと思われるので、機会があればぜひ見てみるのをおすすめします。
多くのファンに愛され続ける一作
ある刑事ドラマの中でも特に人気の高い「Gメン’75」。クールな滑走路でのオープニングシーンや、シリーズごとに入れ替わる新鮮なキャスティングなど魅力的な内容で充実しており、またストーリーで取り上げられる内容も、現実社会での出来事を風刺するようなものもあって、リアルな仕上がりが視聴者を惹きつけていました。
シリーズで300話を超えるほどの長編となりましたが、いまだに多くのファンに愛され続けています。DVDBOXなども発売されているので、ぜひまたGメンの活躍を楽しんでみてはいかがでしょうか。