「2001年宇宙の旅」は、1968年に公開されたアメリカのSF映画。監督を務めたのは「ロリータ」や「時計じかけのオレンジ」「フルメタルジャケット」などで知られるスタンリー・キューブリックです。キャストには、キア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルヴェスター、ダグラス・レイン、などの俳優たちが名を連ねています。
難解なストーリーに引き込まれるSF超大作
物語は遥か遠い昔、まだ人が猿に近い存在だった時代からスタートします。一枚の謎の黒い石版「モノリス」が猿たちの前に突然現れ、この石版に触れた猿たちは動物の骨を武器や道具として使えるように知性が向上していきました。
ここから猿が人になる進化が始まっていき、場面は現代の世界へと移り変わります。
科学の発展によって月に住めるようにまでなった人間たち。そんな時代に、アメリカの宇宙評議会の博士が、月にあるクレーターで発見された「モノリス」の調査に乗り出します。調査中に「モノリス」は強力な信号を木星へ向けて発信。このことから、調査は木星へと進んでいきます。
船長デビット・ボーマンと乗組員たち、そして物語のキーとなる人工知能HAL9000を乗せた宇宙船ディスカバリー号は、その調査先で大きな真実と遭遇することになります。
様々な憶測を呼ぶストーリー解釈
初めて「2001年宇宙の旅」を見た人なら戸惑いを隠せないことがほとんどでしょう。ストーリーの終盤では、人類を超越した存在とされるものが登場しますが、具体的に何かをするわけでもなく、なんとも言いがたいシーンで映画が終幕します。
一般の映画ファンにとっては難解なストーリーであり、哲学の領域にまで達しているといえる本作は、多くの解釈がされ続けています。
公開当時は不評だった!?
「2001年宇宙の旅」は、それまでの映画の概念を覆すほど斬新な作り方でした。従来の映画とは大きく異なり、セリフや解説などを極力減らしながら視覚表現に重きを置いた内容は、当時の映画界に衝撃を走らせました。
その高い映像クオリティや、哲学的ともいえる物語のテーマに賞賛が寄せられていたのは事実ですが、公開当初の興行成績はあまり良いと言えるものではなかったそうです。
というのも、抽象的な表現が多いことや、大衆にとっては難解過ぎるラストシーンに対して賛否両論が巻き起こったからでした。
しかし、度々の映画の再公開などによって評価が高まり、現在においてはSF映画の名作として多くの人に知られています。さらに、21世紀以降になっても映画ランキングなどでそのタイトルを聞かない年はないほど、映画監督や批評家からも愛される作品となりました。
また、日本の文部科学省が「特選」として指定しているSF映画でもあり、日本においてもその評価の高さをうかがい知ることができます。映画のフィルムは1991年にアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録がされており、まさしく不朽の名作として認められている作品です。
宇宙食は本物を使用
劇中では、宇宙船の搭乗員たちが宇宙食を口にしているシーンが見られます。映画のために作られた代用品のように思われるかもしれませんが、撮影には実際の宇宙食が使われていたのです。
美術面や視覚効果などにおいてかなりのこだわりを持って製作された「2001年宇宙の旅」は、小道具にも手を抜いていません。皆さんご存知のあのNASAが実際に開発した宇宙食を用いて、俳優たちが食事するシーンを撮影しています。本物の宇宙食ですから、そう簡単に手に入れられるものではないでしょう。
しかし製作には、多くの科学者や専門家たちが参加していたため、そうした人脈などからNASAから協力してもらうことができたのではないでしょうか。普通の映画なら、それっぽいものを用意して済ませてしまいそうですが、ここまでのこだわりぶりには感心してします。
美術担当にはある有名日本人が予定されていた
本物の宇宙食を撮影に使用するなど、美術面で高いクオリティが求められていた今作。製作当初、監督のキューブリックは今作の美術デザインをとある日本人に打診していました。それがなんと、あの有名漫画家であった手塚治虫だったのです。
キューブリックは手塚治虫の作品である「鉄腕アトム」をアメリカで見て、美術面の担当を打診するために手紙を送ったそうです。しかし、当時の手塚治虫は「ジャングル大帝」のアニメ製作に追われており、オファーを断ってしまったそうです。もしこの時手塚治虫が映画に参加していたら、どんな内容になっていたのか、想像するだけでもワクワクしますね。送られた手紙は紛失してしまったそうですが、封筒の写真は手塚治虫のエッセイ本で見ることができます。
惜しくも手塚治虫の力を借りることができませんでしたが、他の製作陣の尽力によって当時としては凄まじいクオリティの映像美を作り出すことに成功したのは、言うまでもありません。
何度も見返してストーリーを理解したい
一度見ただけではストーリーの全てを理解するのは難しいといわれている「2001年宇宙の旅」。作者が一体どんなメッセージを伝えたかったのか、その答えを知るためには何度も見返してみる必要がありそうです。