日本が生み出した刑事ドラマの金字塔「太陽にほえろ!」

                    

太陽にほえろ! とは

刑事ドラマといえば、まず思い浮かぶのが「太陽にほえろ!」だという方も多いでしょう。1972年に日本テレビ系列で放送がスタートした「太陽にほえろ!」は、名優といわれる石原裕次郎が主演した超人気ドラマです。

石原裕次郎演じる藤堂係長(通称、ボス)を中心人物としながら、様々な事件で活躍していく刑事たちの姿を描いた内容が、一世を風靡しました。警視庁七曲警察署を舞台に、たくさんの登場人物がストーリーを紡いでいく様は、現代でも語り草になるほどです。ドラマは毎週一時間の枠で一話完結型。

ドラマのパート1は、1972年7月から1986年11月までの14年間に渡って全718話も放送されました。パート1はかなりの長寿ドラマとなり、その後はパート2が1986年11月から1987年2月までの全12話放送されました。

登場人物はニックネームで呼び合う

「太陽にほえろ!」といえば、思い出されるのが登場人物たちの印象的なニックネーム。藤堂係長は“ボス”、山村精一は“山さん”、他にも“ゴリさん”、“殿下”、“長さん”、“マカロニ”、“シンコ”、“ジーパン”、“テキサス”、“ボン”、“スコッチ”、“スニーカー”などなど、一見すると人名なのか分からないような面白いニックネームが付けられていました。

登場人物が多いことからも、こうしたニックネームがあることで覚えやすく、そして親しみやすいという狙いもあったのでしょう。今振り返ってみても、思いだすのはニックネームのほうだという人がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

主役が降板!? その代役に抜擢された松田優作

ドラマの当初の構想では、萩原健一演じる早見淳(通称、マカロニ)を主人公として彼の成長を描いていく物語の展開が作られていたそうです。

しかし、萩原が「どうしても降板したい」という要望を出し、さらに「劇中で死にたい」(※死亡者の役をやりたいという意味)という申し出までして、それを受け入れた製作側は、萩原の降板を決めます。この降板には製作陣も驚いたことでしょう。

そして、52話目「13日金曜日マカロニ死す」で、マカロニこと早見淳は通り魔に刺されて亡くなってしまうストーリーが放送され、萩原も番組から降板します。主役級のキャラクターを降板させるという異例の事態には、多くの視聴者も困惑したはずです。しかし、そこで番組は打ち切られることはなく、新たな代役を見つけ出します。それが、後にカリスマ人気俳優となる松田優作でした。

松田は当時まだ無名に等しいほどのレベルでしたが、すでに人気ドラマであった「太陽にほえろ!」への大抜擢もあって、この時を境に人気俳優の仲間入りを果たします。松田が演じた柴田純(通称、ジーパン)は松田にとってもはまり役となり、彼のイメージを世間に強く印象づけたものとなりました。確かに、松田優作といえば刑事役が思い浮かびますね。

松田はドラマのオーディションを受けた当時、家にテレビを置いていなかったために内容を見たことがなかったらしく、自分の感覚だけでシーンを演じて見せたそうです。見たことのないシーンをとっさに演じて見せるというのは、並大抵の役者ができることではありません。こうした天才的ともいえる才能が製作陣によって見出され、後のキャリアにも繋がる大きな転機となりました。

新人俳優の登竜門は、殉職して卒業!

無名だった松田優作の大抜擢でさらなる成功を収めた「太陽にほえろ!」は、それ以降新人や無名の俳優を積極的にキャストに盛り込むようになります。勝野洋や渡辺徹なども、この時期の「太陽にほえろ!」へ出演したことがきっかけでブレイクしていきました。

キャストに加入した俳優はいきなり主演に大抜擢。そして物語の中では新米刑事として、人間的に成長していくストーリーをたどっていくという、現実と物語の中がリンクしたような作りで話題を呼びました。そして、一定期間の役を演じた最後は「殉職」という形で番組から卒業していく、という異色のパターンが定着していきました。

こうして、いわば新人俳優の登竜門のような独自の立ち位置を定めていったのは、昨今のドラマを見てもほとんどないほどユニークなものでした。

刑事ドラマならではの“非番”

「太陽にほえろ!」は人気俳優たちが勢揃いしていたドラマということもあって、出演者のスケジュール調整はかなりシビアに行われていたそうです。

スケジュールの都合などから主要人物が出演しない回も多々ありましたが、そこは現実の警察官における“非番”になぞらえて休みを取っていたようです。ここでも現実とフィクションがリンクしていて、とても面白いですね。

その後も根強い人気の名作ドラマ

伝説的な刑事ドラマとして愛された「太陽にほえろ!」。長きに渡って放送されたことも素晴らしいですが、単純にストーリーの面白さだけではなく、新人俳優の登竜門としての動きがあったり、現実世界とうまくリンクした設定があったりと、様々な仕掛けも楽しみのポイントです。

そして、90年代に入って以降も続編が放送されたり、根強い人気を見せています。彼らの活躍を今一度振り返りながら、ドラマを見直してみるといいかもしれません。

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