金融庁の報告書で、老後の生活資金には2,000万円必要という内容が大きな話題を呼びました。年金だけではゆとりある生活を送るのが困難になりつつある現在、今の年収や貯蓄では、老後どのような生活水準になるのでしょうか。
本記事では年収・貯蓄別に老後の生活パターンをシミュレーションし、以下の計6パターンについて詳しく解説していきます。
年収500万円 × 貯蓄額100万円
年収500万円 × 貯蓄額500万円
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年収700万円 ×貯蓄額500万円
年収700万円 ×貯蓄額1,000万円
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年収900万円 ×貯蓄額1,000万円
年収900万円 ×貯蓄額3,000万円
ぜひご自身の年収や貯蓄額にあわせて参考にしてください。
年収500万円の老後の生活パターン
生命保険文化センターが発表した平成28年度「生活保障に関する調査」によると、老後の最低日常生活費には月22万円、ゆとりある日常生活費には月34.8万円必要です。(※1)
年収500万円で65歳を迎えた時点の貯蓄額が(1)100万円、(2)500万円の2つの生活パターンをシミュレーションしてみます。
(1)貯蓄額100万円の場合(※2)
- 条件
-
夫:60歳の会社員(60歳で定年退職予定)
妻:59歳の専業主婦
年金の受給開始年齢は基本的に65歳(※3)からなので、今回のシミュレーションでは61~64歳までは無収入とします。 - 受け取れる年金額(※4)
- 夫が65歳から66歳まで
老齢基礎年金 + 老齢厚生年金 = 15.3万円/月
夫66歳、配偶者65歳になると、
配偶者の基礎年金が月6.4万円加わり、年金受給額は夫婦で月21.7万円です。 - 生活パターン
- 年金と貯蓄のみで生活する場合、食費や光熱費、居住費、被服費など最低日常生活費だけで月22万円かかるため月0.3万円は貯蓄を切り崩すことになります。しかし、本人が93歳、配偶者が92歳のときに貯蓄が0円となり、日常生活にかかる支出をさらに切り詰めなくてはいけません。
2017年時点の日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性は87.26歳(※5)ですが、将来のために貯蓄額を増やすか、定年後のセカンドキャリアを考えておきたいものです。
(2)貯蓄額500万円の場合(※6)
- 条件
- 同上
- 受け取れる年金額(※7)
- 同上
- 生活パターン
- 年金と貯蓄だけで生活する場合、老後の最低日常生活費は確保できるので貯蓄を切り崩しながらも生涯にわたって必要最低限の生活を送れます。ただし、習い事や旅行、孫や子どもにお小遣いをあげるなど、ゆとりある生活(34.8万円/月の生活費)を目指す場合は本人が69歳のときに貯蓄がなくなります。
今回のシミュレーションでは貯蓄額が100万円、500万円だと年金受給開始までに貯蓄を使い切ってしまう恐れがあります。収入に不安がある人は、定年後も働くという選択肢を検討してみましょう。
年収700万円の老後の生活パターン
年収700万円で65歳を迎えた時点の貯蓄額が(1)500万円、(2)1,000万円の2つの生活パターンをシミュレーションしてみます。
(1)貯蓄額500万円の場合(※8)
- 条件
-
夫:60歳の会社員(60歳で定年退職予定)
妻:59歳の専業主婦
年金の受給開始年齢は基本的に65歳から(※9)なので、今回のシミュレーションでは61~64歳までは無収入とします。 - 受け取れる年金額(※10)
- 本人が65歳から66歳まで
老齢基礎年金 + 老齢厚生年金 = 18.9万円/月
本人66歳、配偶者65歳になると
配偶者の基礎年金が月6.4万円加わり、年金受給額は夫婦で月25.3万円です。 - 生活パターン
- 夫婦で最低限の暮らしを送るのであれば、月22万円の支出となり年金だけで暮らせます。ゆとりある生活をする場合は貯蓄を月9.5万円切り崩すことになり、本人が70歳のときに貯蓄が0円となってしまいます。旅行や習い事、生涯学習などを楽しむことは難しいので、ゆとりある生活のためにはもう少し貯蓄額を増やしておくといいでしょう。
(2)貯蓄額1,000万円の場合(※11)
- 条件
- 同上
- 受け取れる年金額(※12)
- 同上
- 生活パターン
- 貯蓄額500万円のパターン同様、年金だけで必要最低限の暮らしをすることができます。しかし、ゆとりある生活をすると本人が74歳で貯蓄がマイナスとなってしまうので、貯蓄額が1,000万円あっても必要最低限の暮らしとなってしまいます。
貯蓄額500万円の場合と同じく、貯蓄額を増やしたりセカンドキャリアを考えるなど、老後に使えるお金を増やしたいものです。
年収900万円の老後の生活パターン
年収900万円で65歳を迎えた時点の貯蓄額が(1)1,000万円、(2)3,000万円の2つの生活パターンをシミュレーションしてみます。
(1)貯蓄額1,000万円の場合(※13)
- 条件
- 夫:60歳の会社員(60歳で定年退職予定)
妻:59歳の専業主婦
年金の受給開始年齢は基本的に65歳から(※14)なので、今回のシミュレーションでは61~64歳までは無収入とします。 - 受け取れる年金額(※15)
- 本人が65歳から66歳までは
老齢基礎年金 + 老齢厚生年金 = 21.4万円/月
本人66歳、配偶者65歳になると
配偶者の基礎年金が月6.4万円加わり、年金受給額は夫婦で月27.8万円です。 - 生活パターン
- 夫婦の年金受給額が月27.8万円あるため、必要最低限の暮らしを送ると月5.8万円余ります。年金だけでも貯蓄を切り崩すことなく、少しぜいたくな暮らしができます。
旅行や習い事をするなどゆとりある生活を送る場合は、月7万円貯蓄を切り崩すこととなります。本人が77歳になると貯蓄がなくなるので、77歳以降はゆとりある生活を続けるのが難しいです。
(2)貯蓄額3,000万円の場合(※16)
- 条件
- 同上
- 受け取れる年金額(※17)
- 同上
- 生活パターン
- 貯蓄額1,000万円の場合と同じく、必要最低限の暮らしを送るなら年金だけでも十分です。ゆとりある生活を送ると貯蓄がなくなるのは本人が100歳になるころです。生涯を通して夫婦で旅行や習い事をするなどアクティブに活動できるでしょう。
ちなみに貯蓄額が2,000万円の場合でゆとりある生活をすると、本人が89歳のときに貯蓄がなくなります。平均寿命まではゆとりある生活が送れるので精神的にも安心です。
ゆとりある老後に向けて資産を準備しよう
今回は年収・貯蓄別に老後の生活パターンをシミュレーションしました。最低限の生活をする場合は貯蓄額500~1,000万円、ゆとりある生活をする場合は貯蓄額2,000~3,000万円必要です。
貯蓄が2,000万円なくても必要最低限の生活を送ることは可能ですが、老後の生活に不安がある場合は、資産運用や貯蓄方法の見直しをしたり、セカンドキャリアを考えたりして老後に使えるお金を増やしましょう。
「生活保障に関する調査 平成28年度 生活保障に関する調査」
※最低日常生活費には月22万円(36ページ参照)ゆとりある日常生活費には月34.8万円(37ページ参照)
「年金試算シミュレーション」
※本人の就業開始の年齢は22歳、就業終了の年齢は60歳で試算。
「年金について<公的年金は、いつからいくらもらえるの?」
「シミュレーション結果 キャプチャ」
「平成29年簡易生命表の概況」
朝日新聞DIGITAL「平均寿命、男女とも最高更新 世界で女性2位、男性3位」
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