家計の資産・負債は、定期的に見直して問題があれば改善していきたいものです。会社の経営状況を把握する資料として作成されるバランスシート(貸借対照表)は、家計にも当てはめることが可能です。この記事では家計のバランスシートを作成する目的、作成する具体的な方法と注意点について解説します。
バランスシートで家計の健全度を把握
現時点で、自分の家計で負債はどの程度残っていて、資産はいくらぐらいあるのかパッと分かる人は少ないのではないでしょうか。家計のバランスシートを作成し、その時点で家計が健全かどうかをチェックしてみましょう。
バランスシートとは、会社の経営状態の健全度を把握するために利用する財務諸表の一種です。ある時点で、現在持っている資産と抱えている負債をすべて書き出し、会社の資産状況を透明化する目的で使用します。(※1)
資産から負債を差し引いて残った金額は「純資産」です。純資産が毎年増えていれば収益が積みあがっていることを意味し、黒字経営だということが分かります。家計も同様にバランスシートを作成して、毎年純資産が増えているか減っているかをチェックすることで、家計の健全度を確認しましょう。(※2)
預金を毎月行っていても、それ以上に負債を抱えている場合は、純資産は減少します。預金を全くしないでいても、マンションや車などの価値は下がるので、純資産も目減りします。可能なら過去3年分ぐらいのバランスシートを作成して、純資産の増減がどうなっているか見た方がよいでしょう
実際に家計のバランスシートを作ってみよう
早速、実際に家計のバランスシートを作っていきましょう。資産の部と負債の部に分けて、それぞれの項目を洗い出します。記入するのはすべて作成時点での金額や価格です。
資産の部 | |
---|---|
現金 | 現金を記載 |
普通預金 | 普通預金の残高すべて記載 |
定期預金 | 残高すべて記載 |
保険 | 途中解約の一時金や満期返戻金も計算に入れる |
株式 | 株価で計算 |
投資信託 | 基準価額で計算 |
住居 | 価値を調べて記入 |
自動車 | 売却した場合の見積価格 |
その他 | 宝石類やパソコンなどのIT機器、家電など資産価値のあるものはすべて記載 |
作成時点での預金残高は比較的把握していても、保険の途中解約一時金や株式の評価額などは、自分で調査しない限りは分からない「隠れた資産」です。
次に、負債の部を作っていきましょう。こちらも作成時点での金額です。
負債の部 | |
---|---|
住宅ローン | 住宅ローン残高 |
自動車ローン | 自動車ローン残高 |
教育ローン | 教育ローン残高 |
カードローン | クレジットカードや銀行カードなどのローン残高 |
奨学金 | 借入額 |
クレジットカード | クレジットカードの次月払い分の利用残高など |
その他 | 親族からの借金など上記に当てはまらない負債 |
住宅ローンなど長期ローンの残高は、銀行から送られてくるローンの利用明細書を確認して、1年に1回はローン残高を把握します。現時点での負債なので、クレジットカード払いでまだ支払日が来ていない分の利用残高も忘れず確認します。(※3)
資産と負債を洗い出したら、資産から負債を差し引き、「純資産」を確認しましょう。負債の方が資産を上回る場合は、債務超過の状態です。この場合は、債務の中でも利息の高いローンから順番に減らすなどの対策を検討しましょう。
バランスシート作成時の注意点
最後に、バランスシートを作成する際、迷いやすいポイントを注意点としてまとめました。
- 自宅や自動車などは価値が変動するため、作成時点の価値を調べる
- 宝石類や骨董品なども、購入金額ではなく専門業者に査定してもらった価格とする
- 奨学金を現在受け取っている場合も借入金になるので計上を忘れない
- 各種ローンは現時点での「元本残高」を記載する (※4)
物品を資産として計上する場合、間違いやすいポイントは購入価格をそのまま資産として組み込むパターンです。
新築の戸建住宅も、人が住み始めた途端中古住宅となり、毎年価値は下がります。自動車も、走行距離が長くなり、利用年数が長くなるほど価値は落ちるものです。これらの資産は、毎年その時点での価値を調べてバランスシートに書き込むようにしましょう。
建物や自動車など減価償却資産に当たる資産は、国税庁が公開している減価償却資産の耐用年数表を利用して、現在の価値を算出できます。購入金額を耐用年数で割って現時点での資産価値を計算するのもひとつの方法です。耐用年数表は以下のページから参照できます。
■国税庁「平成30年分 確定申告書作成コーナー よくある質問 耐用年数表」
https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensuhyo.html
土地はその時勢によって価格が変動する資産です。土地の資産価値を確認したいなら、国土交通省が毎年発表している公示地価を使って計算しましょう。公示地価は、以下のページを利用すると確認できます。
■国土交通省「土地総合情報システム 地価公示・都道府県地価調査」
http://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=2&TYP=0
宝石類や骨董品も、購入金額ではなく、リサイクルショップなどで見積依頼を出すなどして、いくらぐらいで売却できるか確認します。
また、奨学金は現在受け取り中でも、将来的には返済しなければならないため、負債として計上してください。各種ローンは、現時点での「元本」の残高を書くようにしましょう。
バランスシートで家計の問題点を把握して対策を
バランスシートは、家計の資産と負債を明確にしてくれる便利な表です。1年単位で貯金が貯まっているのかどうかを確認し、純資産が減っているならその原因を突き止めて改善を続けていきましょう。
負債を減らす場合は利息の多い負債から減らすように検討します。また、資産を増やすには、何らかの手段で収入を増やしたり、無駄な出費を抑えたりすることで、貯金に回せるお金を増やすことから考えると良いでしょう。
家計の健全度を確認するためにバランスシートを活用して、老後も安心できるように改善を進めて見てはいかがでしょうか。
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