50歳を過ぎ、憧れの「海外移住」を実現したいと考えたとき、どんな点に気を付けて住む場所を選べばいいでしょうか?
滞在に必要なビザ条件から、気候や食事が合うか合わないか、治安や交通事情といったハード面も気になるポイントです。大切なのは、あなた自身が住みやすいと思うバランスのよい場所を見つけること。
この記事ではシニアの海外移住で移住先を選ぶポイントと、おすすめの移住先をご案内します。
シニアの海外移住で大切な5つのポイント
海外移住を検討する際、まず注目されるのは「ビザ」の問題です。その国で長期滞在や永住できるかはビザを取得できるか否かにかかっています。
しかしそれ以外にも、自分にとって快適に生活できる環境であるか、都市環境や日本との距離といったハード面と治安や語学、食事情といったソフト面の両方からチェックすることが、住みやすい街を選ぶのに役立ちます。
移住先を検討する際、まずは以下の5つのポイントに注意してみましょう。
1. ソフト:治安
日本の安全感覚が、移住先で通用するとは限りません。観光客に人気の街でも、夜の一人歩きが危険だったり、スリや車上荒らしが多かったりする場所もあります。同じ街でも、地域によって治安状況が変わることも。住む場所を決める際は、街全体や周辺地域の治安状況を調べましょう。
2. ソフト:語学
ハワイのように日本語が通じやすい観光地もありますが、住むとなると話は別です。日常生活だけではなく、病気や事故など非常事態に備えて、現地の言葉を理解できる場所が望ましいといえます。日本人の永住者・長期滞在者が多い都市部では、美容院や飲食店などに日本人経営者が多く、日本語が使えるメリットもあります。
3. ハード:都市環境
住む街のハード面は、直接的に生活の快適度を左右します。交通事情では渋滞の度合いや、車以外に利用できる公共機関があるかを確認してください。体調を崩したときに受診できる医療機関が近くにあるかどうかも大切なポイントです。
海外の住宅事情によっては、「お風呂」がないことを耐えられないと感じる人もいます。東南アジアのコンドミニアムのようにプールやフィットネスジムつきといった豪華な住まいでも、気候の暑さに身体が合わない場合もあります。検討している街がどのような住宅スタイルが主流かを調べ、1年を通じた気候の変化をチェックしておきましょう。
4. ソフト:現地の食事情
現地の食事が舌にあうか以外に、海外生活では日本の味が恋しくなることもあるため、日本食が手に入りやすい街であるかを確認しましょう。現在では世界中の至る所に日本食品が流通しており、醤油や味噌、お米などの定番から、カップラーメン、わさび、たくわんなど豊富な食材が手に入る街もあります。
5. ハード:日本との距離
1年のほとんどを海外で過ごしたり、永住権を取得したりしたとしても、日本に帰国しなければいけない要件が発生するかもしれません。また、ホームシックで一時帰国の想いが募ることも。
移住先を選ぶにあたって、日本からの飛行時間や乗り換えの回数も検討項目にいれましょう。10時間以上のフライトや、乗り換えが複数ある経路の場合、年をとるにつれて移動がおっくうになります。また、アクセスのしやすさを考慮した場所なら、日本から友人や親戚・家族が訪問しやすくなります。
移住先を選ぶにあたって、日本からの飛行時間や乗り換えの回数も検討項目にいれましょう。10時間以上のフライトや、乗り換えが複数ある経路の場合、年をとるにつれて移動がおっくうになります。
また、アクセスのしやすさを考慮した場所なら、日本から友人や親戚・家族が訪問しやすくなります。
また、この5つに加えて、先に説明したビザの取得条件と、物価の安さが大切な基準です。物価については、東南アジア諸国がここ数年の人気渡航先ですが、現地の経済発展により変動します。「安くて生活しやすい」という数年前の情報から、がらりと状況が変わっている可能性があるため、移住先の検討には必ず最新の情報を入手しましょう。
シニア世代が住みやすい街・海外移住先ランキング
では、先に挙げた5つのポイントと「ビザ」「物価」を考慮しながら、シニア世代が住みやすい街を5つご紹介します。
◼️【5位】フィリピン・セブ島
日本人の長期滞在者数で15位のフィリピン・セブ島。英語が公用語であり、近年は日本人向けの語学学校が若者から注目を集めるなど人気の渡航先です。寿司やラーメンといった日本食レストランが複数あり、日本製品の買い物も日系スーパーで済ませることができます。
左ハンドル・信号が少ない・渋滞が多いなど、自家用車を運転する場合は注意が必要です。タクシーやバイクタクシーの利用が盛んです。公共バスの利用の際は、スリなどの犯罪に注意が必要です。また、外務省の安全渡航情報では、「渡航の危険性レベル1:十分注意してください」となっていることに留意しましょう。
・ビザ:永住資格を取得できる「特別居住退職者(SRRV)ビザ(※1)」があります。50歳以上の場合、以下の条件を満たす必要があります。
【条件】 |
---|
10,000米ドルの預金(年金受給あり) |
20,000米ドルの預金(年金受給なし) |
投資に転換できる金額が50,000米ドル以上ある |
・物価:単位はフィリピン・ペソ。1フィリピンペソ・ペソ=約2円(2019年8月30日現在)(※2)で、物価は日本の1/3程度です。東南アジア諸国(タイやインドネシア、マレーシア)と比較しても安くなっています。(※3)
治安 | 日本人の人気渡航先。場所によってテロの脅威に注意。 |
語学 | 英語が公用語 |
生活面 | 自家用車以外なら、タクシーやバイクタクシーを利用。年中温暖な気候。 |
食事情 | 日本食レストランや日系スーパーあり。 |
日本との距離 | 直行便あり。フィリピン航空で成田から約5時間 |
◼️【4位】オーストラリア・ケアンズ
グレートバリアリーフなど、美しい自然を有するオーストラリアのケアンズ。成田から直行便で約7時間半。日本人に人気の観光地でもあります。
住環境や医療、交通機関が整っている一方で、物価は高いです。さらに、過去には「リタイアメントビザ」というシニア向けの永住権を発給していましたが、2019年現在では申請受付を停止しています。しかしながら、日本との距離、美しい自然、英語圏であることや移民国家ゆえの多様性の豊かさと治安の良さは、海外に住みたい人にとって依然として魅力的です。
気候が雨季と乾季に分かれており、南半球に位置するため、日本の季節とは逆。日本の真夏に涼しいケアンズに滞在するなど、観光ビザを利用した3か月の短期滞在、もしくは長期訪問観光ビザで最長12か月の滞在が考えられます。
・ビザ:永住ビザのハードルは高く、リタイアメントビザの発給はありません。観光ビザ(Eビジター)は最長3か月、長期訪問観光ビザ(ビジタービザ)は最長12か月の滞在が可能です。(※4)
・物価:通貨はオーストラリア・ドル。1オーストラリア・ドル=71.73円(2019年8月30日現在)(※5)。人件費が高いため、外食は日本より高価です。食費や生活費、交通費も日本と変わらないか少し高いぐらいのレベルです。
治安 | 良好 |
語学 | 英語が公用語 |
生活面 | 海が近く自然に恵まれた都市。雨季と乾季に分かれた熱帯性気候。日本と季節が逆で1月~3月は最高気温32度程度になる。 |
食事情 | 日本食レストランや日系スーパーあり。 |
日本との距離 | 成田・大阪から直行便あり。約7時間半。 |
◼️【3位】インドネシア・バリ島
日本人長期滞在者数12位のインドネシア。過ごしやすい気候のバリ島は、日本人にも人気の渡航先です。日本食の事情も充実しています。飛行機で2時間の首都・ジャカルタに飛べば、日本製品の購入等、都会の便利さを味わうこともできます。
治安は一部の地域では注意が必要です。観光地でもあるためにおおむね良好ではありますが、外務省の渡航安全レベルは1でテロ等の脅威が注意喚起されています。さらに、現地の公用語は「インドネシア語」です。レストランやホテルでは英語が通じるところもありますが、住むとなるとインドネシア語に精通しているほうが望ましいといえます。また、交通ルールが厳格なわけではないため、運転や歩行の際に注意が必要です。
外国人向けの住宅は、豪華なコンドミニアムが中心です。
・ビザ:12か月の滞在が可能な「高齢者一時滞在ビザ(Retirement Visa)(※6)」があります。55歳以上が対象で取得条件は以下の通りです。
【条件】 |
---|
毎月2,500米ドルの生活費の支払い証明、または年金証明 |
指定された観光地域で35,000米ドル以上の宿泊滞在施設の購入証明書、または月額1,000米ドル以上の賃貸証明 |
滞在中のインドネシア人の使用人を雇用する証明 |
・物価:通貨はルピア。1ルピア=0.0075円(2019年8月30日現在)(※7)。日本より物価が安く1/3~1/2ぐらいの感覚です。
治安 | 場所によっては、治安に注意。 |
語学 | インドネシア語 |
生活面 | 交通機関はタクシーかシャトルバス。熱帯モンスーン気候であり、年間の平均気温が28度と1年中暑い。 |
食事情 | 日本食レストランや日系スーパーあり。 |
日本との距離 | 直行便あり。約7時間40分。 |
◼️【2位】マレーシア・クアランプール
マレーシアの首都です。東南アジアの中でも活気あふれる都市として、高層ビルが立ち並ぶ半面、屋台等の庶民的な雰囲気も残した変化に富んだ街です。「東南アジア」のイメージとは異なり、清潔で美観が保たれています。
物価が安く、マンション等の整備された住環境を選択できます。日本人長期滞在者数も11位と日本人に人気の渡航先です。また、多民族国家であり食事事情が充実しています。英語が公用語に入っている点も魅力的です。
インフラが充実していることから、電車等の交通機関が安定して運行しています。
・ビザ:MM2H(※8)と呼ばれるビザで、最長10年の滞在が可能です。対象は50歳以上で以下の条件を満たす必要があります。
【条件】 |
---|
月額1万リンギット以上(約25万円)の収入証明 |
最低35万リンギット以上(約880万円)の資産 |
・物価:通貨はリンギット。1リンギット=約25円(2019年8月30日現在)(※9)。物価は日本の1/3前後です。
治安 | 良好。ただし、観光地等でのバイクによるひったくりに注意。 |
語学 | マレー語と英語が公用語 |
生活面 | 気温が高く、蒸し暑い日が基本。先進国と比較しても遜色のないほどインフラが充実している。電車あり。 |
食事情 | 日本食レストランや日系スーパーあり。 |
日本との距離 | 直行便あり。約7時間半。 |
◼️【1位】タイ・バンコク
留邦人数は年々上昇し、総人数で4位となる海外移住の人気渡航先です。
ジム・プール等が整備されたコンドミニアムが多く、多国籍の食事や日本食事情も充実しています。日本食スーパーでお刺身や豆腐を買うこともできます。永住権が取得可能なリタイアメントビザのハードルも低いため、日本人に人気の海外移住先です。現地の公用語はタイ語です。英語に精通しているスタッフがいるお店はたくさんありますが、街中の看板や駅の表示はタイ語。そのため、最低限の日常会話やタイ語の表記は覚えておいたほうがいいでしょう。
首都バンコクは都会でありながら、物価の安さが人気の理由のひとつです。ただし、近年は経済発展のために物価は上昇傾向にあります。
・ビザ:有効期限が12か月の「退職者長期滞在ビザ(OA)(※10)」と10年以上の滞在が可能な「退職者長期滞在ビザ(OX)(※11)」があります。
【退職者長期滞在ビザ(OA)ビザの有効期限 12か月】 |
---|
50歳以上 |
以下のいずれかの証明を用意 1. 預金残高証明書(800,000バーツ以上の預金額が必要) 2. 年金証書(月額65,000バーツ以上の受給額が必要) 3. 預金残高証明書と年金証書(合算で800,000バーツ以上が必要) |
【退職者長期滞在ビザ(OX)10年以上滞在が可能】 |
---|
50歳以上 |
以下のいずれかの証明を用意 1. タイ国内銀行で発行した預金残高証明書(3,000,000バーツ以上の預金額が必要) 2. タイ国内銀行で発行した預金残高証明書(1,800,000バーツ以上の預金額、および1,200,000バーツ以上の収入を証明できる書類が必要) ・物価:通貨はバーツ。1バーツ=約3.5円(2019年8月30日現在)(※11)。日本の1/2~1/3の物価です。 |
治安 | 良好 |
語学 | タイ語が公用語 |
生活面 | 電車(BTS)、地下鉄(MRT)等が整備されている。ほかにも、タクシーやバイクタクシー、三輪バイクのタクシーのトゥクトゥクも。交通渋滞が激しい。 |
食事情 | 日本食レストランや日系スーパーあり。 |
日本との距離 | 直行便あり。約6時間半。 |
老後の海外移住で陥りやすい落とし穴
これまでに紹介した移住の情報は、インターネット上でもある程度は収集することが可能です。インターネットを通じて、現地で生活している人の生の声も確認することもできます。
しかし、見聞きするだけと現地で実際に体験することは違います。移住は大きなお金も動きますし、時間もかかります。移住してから「思っていたのと違った」とならないために、まずは下見もかねたプチ移住をおすすめします。
期間はできれば、短くても1週間はあったほうがいいでしょう。もし、近隣都市とも比較するなら2週間以上あるほうがより多くの情報に触れられます。スーパーやレストランで物価、食事情をチェックしたり、現地の不動産屋で住居を調べたり。交通機関を利用するなど、より現地での生活のイメージを膨らませることができます。
現地での公用語を使いこなせるのであれば、航空券の手配から現地の移動まで自分ひとりで行ってみても良いでしょう。公用語での会話や読み書きに不安があれば、現地を拠点にしている移住サポートエージェントに依頼してみましょう。ただし、なかには詐欺まがいの悪質な業者も報告されています。依頼の際は信頼性をチェックしましょう。
また、夫婦で移住する際はパートナーの意見も大切です。一緒に下見移住で候補先を訪れたり、不安に思っている声に耳を傾けましょう。移住先の環境で快適に過ごし、そこでしかできない楽しみを見つけるのが、シニアの海外移住を満喫する秘訣です。
まずは下見をかねたプチ移住がおすすめ
どれだけ情報を集めても、現地に行ってみないと「合う」「合わない」は実感できません。意を決して移住して「想像していた暮らしではなかった」と後悔しないように、候補の移住先には数回短期滞在を経験しておきましょう。
魅力ある都市はいくつもあります。かといって、全てが完璧という場所も少ないものです。「なぜ海外に住みたいのか?」と、自分なりの優先ポイントを決めることが大切です。
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