カラーテレビ その誕生と流行をふり返る

                    

1960年9月10日、日本で初めてカラーテレビの本放送が開始されました。この記事ではカラーテレビの誕生、生活の必需品になった流れや現代のテレビ事情を紹介していきます。

美しい色合いでテレビの表現を飛躍させた

それまでモノクロであったテレビですが、「総天然色テレビジョン」などと呼ばれるように色鮮やかなカラーで見ることができるようになり、より幅広い表現が可能になりました。

このカラー放送に合わせて東芝から初めてのカラーテレビが発売され、大きな話題を呼びました。その後も次々と各メーカーがカラーテレビを開発していきました。

しかし当時の販売価格は約50万円前後で、今の貨幣価値にして約300万円という一般庶民では到底手を出すことができないほど高価なものでした。カラー放送開始当初は、カラーに対応した番組もかなり少なく価格の問題もあって一般家庭への普及はほとんど進むことがありませんでした。

当時の家庭などはまだモノクロテレビが大半であったので、テレビの番組表には「カラー」という表記がされていたのを覚えている人もいるでしょう。いつか自分の家でもカラー放送を楽しめることを夢見ていた子供も多かったに違いありません。

そんな中、東京オリンピックの開催や高度経済成長など好景気の影響で段々と安価なカラーテレビの大量生産が実現し、お茶の間への普及が進んでいきました。1977年には、再放送等を除いた全ての放送がカラー放送となりました。

新たな三種の神器、3Cと呼ばれた

1950年代には、モノクロテレビ、洗濯機、冷蔵庫が新時代の生活必需品として「三種の神器」と呼ばれるようになり、日本経済の成長期において大きな役目を果たしました。

そして、新たなる三種の神器として話題になったのが、クーラー、自動車、そしてカラーテレビでした。それぞれの頭文字(Cooler、Car、Color TV)を取って「3C」と呼ばれたこれらは、当時のいざなぎ景気と共に人々の生活を大きく変えていくものとなり、現代まで通ずる文化の基礎を固めていったといっても過言ではないでしょう。
当時は、カラーテレビを含む3Cを揃えることに躍起になっていた家庭も多かったのではないでしょうか。子供たちの喜ぶ顔を見るために奮発するお父さん方の姿がついつい思い浮かびます。

カラーテレビ普及に一役買った東京オリンピック

1960年の日本初カラー放送以後、カラーテレビの普及を目指していた各メーカーですが、当時としては非常に高価であったことなどからモノクロテレビに比べてなかなか普及が進まない状況にありました。

そんな中、1964年に日本で東京オリンピックが開催されました。この大会はカラーでの放送が実施され、日本中の国民から大きな注目を集めました。日本で初めてとなるオリンピックがカラーで放送されるということで、各メーカーはその話題性にあやかって宣伝に力をいれるようなり、多くのカラーテレビが生産されていきました。

しかしながら、まだ大量生産によるコストの低下を実現することが間に合っておらず、結果的には東京オリンピック開催から終了までにカラーテレビの普及率が大幅にアップすることはありませんでした。

ただ、わずかではありましたが当時すでにカラーテレビを導入していた家庭もあったため、東京オリンピック中継をカラーで見たことがある人は、かなり貴重な体験をしたと言っても良いでしょう。

その後、勢いづいてきたカラーテレビ業界は徐々に安価なカラーテレビを生産することに成功していき、1970年代以降には日本中の家庭に普及していくことになりました。

現代のテレビ事情

カラーテレビの普及以降、番組の内容も多種多様なものが放送されていくようになりました。ドラマや映画、ニュースやドキュメンタリー、そしてバラエティやアニメなど、昔からは想像もできなかったような番組がたくさん生まれました。

現代ではテレビの普及率もかなり高まったため、日本人で「テレビを見たことがない」という人はまずいないでしょう。それと同時にテレビが人々に与える影響力も強くなっています。ポジティブな内容のものであれば良いですが、犯罪を誘発してしまうようなケースも実際に多く見られるようになってきました。

電源を付けてチャンネルを変えれば、ショッキングな映像でも否応なしに目に飛び込んでくるため、特に子供達にとってはどんな影響が及ぶのか不安な面もあると思います。そうした部分への配慮は年々行き届いてきている反面、バラエティ番組の刺激が減り、テレビ離れを引き起こすひとつの原因にもなっているそうです。

個人化した生活から、人と人との繋がりを大切にする生活へ

現代ではテレビをカラーで見ることは当たり前になっていますが、当時ではかなり貴重であり、近所にカラーテレビが導入されたときは、こぞって見に行った人もたくさんいるでしょう。

そうしたご近所付き合いみたいなものも当時は当たり前のようにありましたが、今の都会ではそれぞれが独立して生きていくことが中心になっていて、近所の人とテレビを一緒に見るなんていうことはまず考えられなくなっています。

テレビひとつとっても、こうした我々日本人の文化の移り変わりが見て取れるようで、便利になった分、どこか寂しさも感じます。新しい技術も素晴らしいことですが、人間同士の繋がりも大切にしていくことで、より豊かな暮らしが実現できるのではないでしょうか。

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